星組公演「柳生忍法帖」初日観劇感想 礼真琴&舞空瞳
星組公演「柳生忍法帖」初日観劇の感想です。
ショーの感想は先日書きましたが芝居の方はどう書けばいいか、なかなかまとまらなくて、、、
「芝居は原作の面白さを全く出せていない」
これは僕が初日観劇したその日の夜のツイートです。
僕は原作のある演目は原作を読んで観劇するタイプです。今回も何回も読みました。
原作、とにかく面白いです。エログロの描写が多いので「え?これ宝塚でやるの?」って思いましたが、当然そのような部分はカットされるので心配していませんでしたし、原作の面白さはその部分とは関係ない所にありますから。
では原作のどこが面白いのか。
話の大雑把なあらすじは
時代は江戸徳川3代将軍のころ。
悪逆の限りを尽くす暗君会津藩主加藤明成を見限った国家老堀主水は、一族を率いて会津を退転するという騒動を起こす。
明成は幕府の許可の元彼らを捕縛し、さらに連行中に一族の女たちが匿われている男子禁制の尼寺東慶寺を強襲し、主水らの目の前で彼女らを惨殺する。
これを実行したのは「会津七本槍」と呼ばれる明成子飼いの家来だった。
騒ぎは寺の後見人である天樹院千姫の出現によって収められるが、助けられ生き残ったのは堀主水の娘、お千絵を始めとする7人のみだった。
その後、堀一族の男たちは処刑されたが、残った7人の女たちは加藤明成及び会津七本槍に復讐を誓う。
千姫はそれを後援するが、彼女はそれに男の手を借りることをよしとせず、あくまで7人の女たちの手によってなされるべしと考える。
しかし、敵たる七本槍はいずれもそれぞれの武芸に精通した達人ばかりで、そのままではとても彼女たちの手に負える者ではない…
千姫に相談を受けた沢庵和尚は、反骨と無頼をもって知られる柳生一族の剣侠・十兵衛に堀一族の女たちの師範役を依頼する。
十兵衛は彼女たちに剣術を教え、また巧みな戦略をもって七本槍を一人、また一人と殺害していく。
最後は七本槍全員を殺害。その頭の銅伯を亡き者とし明成は配流となり女達の敵討ちは成し遂げられる。
原作の面白い所は人それぞれ感じ方があると思いますが僕の感覚としては
普通では到底勝ち目のない女達が十兵衛の巧みな戦略で悪である七本槍を一人、また一人とやっつけていく話の展開の面白さです。
十兵衛が策を練って最後女でも敵を殺せる状況を作ってやる、その細かい描写が実に面白く展開していきます。
なので次はどんな作戦で相手を倒すのだろうという期待感が高まります。
約1000ページにおよぶ長編小説なのでその描写は実に細かいです。長編だからこそあそこまで細かく表現できます。
今回大野先生はその長編の話を最初から最後まで忠実に描きすぎたのではないでしょうか。
とはいえ相当な部分はカットされてはいます。それでも1時間半では全然時間が足りないと思います。
先程書いたこの原作の面白さ(十兵衛の戦略、七本槍がだんだん殺される緊迫感など)を1時間半の舞台で表現するのがもともと無理があると思います。
やるなら2時間半ある別箱かな。
どうしても1時間半でやるのなら
今回ゆらをヒロインにした(これがまた疑問ですが)のなら会津での出来事だけをバサッと切り取るとか、もっと言えば十兵衛が鶴ヶ城に単身乗り込む以降を切り取るとか、割り切った方がよかったのではないでしょうか。
そうすれば十兵衛とゆらの関係とか銅伯と天海の関係とかあるいはもっとそれぞれの心情とかを細かくわかりやすく表現できたように思います。
七本槍も3人ぐらいの配役にして4人は既に死んでいる設定にするとか。
宝塚はトップ、トップ娘役、2番手の絡みがしっかりしてないと感動できません。
死ぬ順番も2番手の銅伯が死んで最後に漆戸と一騎打ちでは「宝塚としてはダメ」だと思います。盛り上がりません。
やはり最後は銅伯が派手に死なないと。
ゆらが十兵衛に惚れるのが唐突すぎるとの指摘も多いですがこれも原作通りです。
今回はゆらと漆戸との過去を追加してゆらが十兵衛に恋する理由付けを原作よりわかりやすくしていますがそれでも唐突感は否めません。
トップ娘役がゆらを演じる以上もっと十兵衛とゆらの関係性を膨らます必要があります。しかしその時間が足りない。
なので前に戻りますが切り取る範囲を物語の後半に絞るべきだったと思います。
そしてそもそもなこちゃんの役は千絵でよかったのではないでしょうか。これは原作を読み終えた瞬間の感想です。過去の記事にも書きました。
ただし原作では千絵はそれほど登場しませんのでもっと役の比重を大きくする必要はありますが。
堀一族の女7人のリーダーである千絵が指南役の十兵衛と行動を共し悪の七本槍、明成を追い詰めていく。
そして二人の恋が芽生えていく。
そういう設定の方が宝塚らしくてよかったような。なこちゃんの身体能力も存分に発揮できますからね。
ただ今回はなこちゃんに娘役としての新しい魅力を付けてほしいという先生の考えもわかりますが、、、
いろいろと初日を見た感想を書きましたがこれは「原作を読みすぎた人」の感想と受け取ってください。
どうしても原作と比べてしまい期待してしまいます。
実は原作を全く読んでいない予備知識のない知人は「結構面白かった」と言っています。
ツイートを見ても「面白かった」という人の方が圧倒的に多いです。特に原作を読んでないライトな人が。
なのであまり難しく考えずに気軽に観劇すれば楽しめる演目だと思います。
そういう意味で思い返すと「意外と面白い演目ではないか」と最近思い始めています。
まず話は非常に単純です。復讐に燃えるか弱き女たちが悪を倒すという大きなストーリーはわかりやすい。
そして主役が何をしたいかが明白です。宝塚で最悪なのが「主役が何をしたいのかが全く見えない」演目です。今回それはありません。
メインキャストごとの感想
ことちゃん柳生十兵衛
歌唱力は今更言うまでもないですがさらに磨きがかかってきました。
今回立ち回りしながら歌いますがあんなに動き回って全く歌がぶれないのはどういう心肺機能をしているのでしょうか。
立ち回りも多いですがやっぱりキレキレで腰が入っているし見ていて気持ちいいですね。
この歌や身体能力の凄さは昔から見ている我々ファンとしては「当たり前」になっている部分もあるのですが、ツイートやブログでみなさんが驚いているを見て「当たり前ではない、すごいことなのね」と改めて実感しています。
そして特に女7人に対してですがお茶目な台詞の言い回しもいい感じです。このあたりは原作通り。
ビジュアルの精悍さ、悪に対する低音ヴォイスでのかっこよさ、女たちに対する心の優しさなどさまざまな十兵衛を見ることができます。
ことちゃんも役者としての幅がどんどん広がっている印象です。
なこちゃんゆら
なこちゃんとしては初めてとなる妖艶な女役。
極悪非道なそしてちょっと変態じみた殿の側室であり不死身な銅伯の娘。
ゆら本人も相当な悪事をしているというとても難しい役です。
まずはビジュアル。
豪華な衣装としゃべ化粧で妖艶な側室の雰囲気がピッタリです。
そして十兵衛に恋する前の冷たい怪しい雰囲気と十兵衛に恋してからのデレデレ感の違いがはっきり出ていてそこがよかった。
十兵衛との絡み、関係がもう少しあるともっとよかったですが、
十兵衛の最後の台詞「もうひとり、おれだけが弔ってやらねばならぬ女がある」に救われた気がしました。
愛ちゃん銅伯
108歳にとらわれず年齢不詳のビジュアルにしたのは正解でした。銅伯の怪しさと宝塚の2番手としてのかっこよさを両立させていました。
髪の毛の色を変えて登場した100年前のシーン。銅伯の、そして芦名一族の野望を表現するためのシーンだと思いますが必要あったのかな。
愛ちゃんただでさえ2役なのにあれで初見の人はよりわかりずらくなったのではないでしょうか。
あとやっぱり最後に死ぬ設定の方が盛り上がったような。
そもそも銅伯は十兵衛や女たちと直接戦うことが少ないので、愛ちゃんを漆戸にして最後ことちゃんと決闘させる(銅伯の役の比重を下げて)とかの方が宝塚的には盛り上がったかな、、、
七本槍
みんなビジュアルは最高。衣装も豪華でした。
ただ極悪非道な悪人に見えないのですよね。
先生が全体的に軽い明るい雰囲気の演出にしたかったためでしょうか。
でももう少し悪人に見えないと女たちの仇討ちという本筋に説得力が足りないように思います。
最初に映像とか使って残虐なシーンを入れるとか。
いろいろ書きましたが1回の観劇での感想なのでピントはずれかもしれません。もしもう一度観劇できれば新しい発見もありまた感想も変わるかもしれません。
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