宝塚大劇場で上演中の月組『ガイズアンドドールズ』(GUYS AND DOLLS)を観劇しました。
私は2015年星組版を何度も観ていて、セリフやナンバーもほぼ覚えています。今回はあえて予習せず、初見のような気持ちで臨みました。
観劇後の率直な感想を、ファン目線で愛を込めつつも、作品への希望も含めてお伝えします。

演出変更で感じたこと
まず驚いたのは歌詞やセリフの変更の多さ。
特にアデレイドの名フレーズ「くびったけよ〜」がなくなっていたのは、長年のファンとして寂しさを覚えました。
また、ナイスリー・ナイスリー・ジョンソンと仲間たちが3人で競馬新聞を読みながら銀橋を渡り、歌う「走る、走る」の場面もなくなり、あの独特の場末感が薄れた印象です。
SNSでも「演出が洗練された分、ギャンブラーたちの怪しさや混沌が減った」という声が少なくありません。
確かに今回の月組版は全体に清潔感があり、整った雰囲気がありますが、この作品が持つ“危うさ”や“人間臭さ”は少し控えめになっていました。
スカイとネイサンのキャラクター性
『ガイズ&ドールズ』の魅力は、2組の恋物語に加え、ギャンブラーたちが神の導きで変わっていく過程にあります。
しかし今回、ギャンブラーというより“真面目でいい人”に見えるキャラクターが多く、悪党としての影や裏の顔がやや薄かった印象です。
鳳月杏さん演じるスカイは、滑舌も良く、台詞回しも安定しており、芝居力の高さはさすがです。
ですがスカイという人物は、カッコよさと同時に“どこか胡散臭い”魅力が不可欠と思います。
今回はその危険な香りがあまり感じられず、「鳳月杏」という優等生な俳優像のまま見えてしまいました。
風間柚乃さんのネイサンも同様で、芝居は的確で安心して観られますが、14年間アデレイドを待たせてしまう“だらしなさ”や“抜けた愛嬌”が弱めでした。
本来、ネイサンは少しネジが外れた人間味と逆にスッと立っているだけでカッコいいのが魅力で、その危うさがあるからこそアデレイドも惹かれ続けるわけですが、今回は役の枠にきれいに収まってしまった印象です。
こう書くと辛口に聞こえるかもしれませんが、これは役者の実力不足ではなく、むしろ芝居力があるがゆえに“与えられた役をきっちりこなす”方向に傾いた結果だと思います。
ただ、観客としてはもう一歩踏み込んだ“化け方”を見たかったというのが正直なところです。
脇役・アンサンブルの印象
ナイスリー・ナイスリー・ジョンソン(礼華はるさん)は軽やかな演技で場を和ませ、存在感は十分。
ただし、ギャンブラーとしての危険な匂いはほとんどなく、むしろ陽気な街の青年のようでした。
これはビッグ・ジュールにも言えることで、怖さよりも人懐こさが前面に出ていた印象です。
その他のギャンブラーたちも全員が“きちんと揃った良い子”に見え、個々のキャラクター性や雑多さは控えめです。
この作品が本来持つ“混沌とした集団感”や“バラバラな魅力”は、もう少し残してほしかったところです。
彩みちるさんのアデレイド
アデレイド役の彩みちるさんは、想像よりも大人っぽい解釈で役を作っていました。
雪組時代を知っている身としては、もっと可愛らしい方向かと予想していましたが、落ち着いた色気を持つアデレイドも説得力があり、特にナンバーの歌唱は安定感がありました。
星組版の可愛らしさ全開のことちゃんアデレイド(礼真琴さん)とはまた違う魅力で、役本来の“芯の強さ”を感じさせてくれます。
この役づくりは好みの分かれるところかもしれませんが、私は「こういうアデレイドもあり」と感じました。
月組全体の完成度
批評的な部分も書きましたが、月組全体の完成度はやはり高く、海外ミュージカルらしい歌・ダンス・芝居の三拍子が揃っていました。
歌唱面では不安を感じさせる人は一人もおらず、ギャンブラーたちの群舞やコーラスも迫力がありました。
SNSでも「まとまりのある完成度の高い舞台」という意見が多く、芝居や歌唱の安定感は今回の大きな強みだと思います。
SNSでの主な反応まとめ
今回の月組版『ガイズ&ドールズ』については、SNSでもさまざまな感想が寄せられています。
好意的な意見もあれば、役づくりや演出に関する指摘もあり、観客の視点の多様さが感じられます。
こうした声からも、今回の舞台が「整った上品なギャンブラー像」として好まれる一方、
「もっと危うさや破天荒さが欲しい」という意見も根強いことが分かります。
観客の好みや期待によって、印象が大きく変わる作品と言えるでしょう。
まとめ
月組版『ガイズ&ドールズ』は、洗練された演出と安定感のあるパフォーマンスが光る一方、原作の持つ“怪しさ”や“人間臭さ”はやや控えめでした。
スカイやネイサンの役づくりは誠実さが際立ち、危険な香りや裏の魅力がもう一歩あれば、作品の印象はさらに深まったかもしれません。
それでも、月組らしい高い完成度と安定感は揺るがず、観劇後に「やっぱり月組は巧い」と再認識させられる舞台でした。
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