宝塚の舞台って、実はいろいろなスタイルがあるんです。
たとえば「大劇場の二本立て」(お芝居とショーがセットになっている公演)、一本ものの長編作品、そして小劇場などで行われる“別箱公演”なんていうのもあります。
今回はその中でも、宝塚初心者さんに特におすすめしたい「大劇場の二本立て」の“お芝居”に注目してみました!
ショーとセットで観られるので、1回の観劇で2度おいしいのがこのスタイルの魅力。
お芝居ならではのストーリーの面白さ、役者さんたちの演技力にもじっくり浸れるラインナップをご紹介します♪
星逢一夜(ほしあいひとよ)

2015年|雪組|主要キャスト
- 天野晴興(紀之介):早霧せいな
- 泉(三日月藩の娘):咲妃みゆ
- 源太(親友・泉の幼なじみ):望海風斗
- 徳川吉宗(第8代将軍):英真なおき
あらすじ
作品概要・演出家
- 作・演出:上田久美子によるオリジナル和モノ・ミュージカル・ノスタルジー作品。
江戸時代中期、天文学に夢を馳せる三日月藩の少年・紀之介(後の晴興)と、身分違いの娘・泉、幼なじみの源太との間に芽生えた友情と愛、そして運命の行方を描く。 - 上田久美子の宝塚大劇場デビュー作で、「悲恋」・「絶望と希望」「濃厚な情」をテーマにしたドラマティックな日本モノとして構成。
冒頭のあらすじ
時は江戸時代、長崎のはずれにある小さな藩。厳格な父に育てられた藩主の息子・天野晴興(あまのはるおき)は、幼いながらも複雑な思いを胸に抱えていた。
そんなある夏の日、彼は身分を隠して城下を抜け出し、自由な時間を楽しむうちに、町の娘・泉とその兄弟たちと出会う。
年齢も境遇も異なるはずの彼らとの交流は、晴興の心にこれまで知らなかった温かさを灯していく。しかし——。
星が瞬く一夜の出会いは、やがて避けがたい宿命の幕開けとなる。少年たちの無垢な時間は、どこへ向かっていくのか……。
おすすめポイント
- 早霧せいな・咲妃みゆ・望海風斗の見ごたえあるお芝居
この作品では、主要キャスト3人の熱い演技が特に印象的です。早霧さんが演じる孤独で頭のいい晴興(はるおき)、咲妃さんの心に強い思いを秘めた泉、望海さんのやさしくて情の深い源太。それぞれの役が心に響き合い、舞台に深みを与えています。 - 星とふるさとの風景が重なる、美しい世界
星や天文学のテーマが物語の中心にあり、星をめぐるロマンチックな話と、日本のふるさとの風景が重なって、とても美しい世界が広がります。感情が大きく動きながらも、落ち着いた雰囲気のあるストーリーが魅力です。 - 上田久美子さんらしさが詰まっている
まっすぐすぎるほど純粋な登場人物と、時代の流れにゆれる心の動きがていねいに描かれていて、上田さんらしい作風がしっかりと出ている大劇場作品です。 - あと味の良い作品
公演のあとには、客席からすすり泣きが聞こえるぐらい感動的で切ない作品ですが、なぜかあと味の良い作品です。最後キャストが子供の頃に帰って終わりますが、その笑顔がとても楽しそうです。
まとめ
「星逢一夜」は、運命に引き裂かれる三角関係と、星への夢とともに描かれる切ないドラマが胸に迫る作品です。雪組の実力派スター・早霧せいなさんを中心に、咲妃みゆさん、望海風斗さんという演技派が紡ぐ濃密な共演が光ります。悲恋だけで終わらない、余韻のある大劇場作品として、宝塚初心者にもおすすめの一作です。
Shakespeare 〜空に満つるは、尽きせぬ言の葉〜

2016年|宙組|主要キャスト
- ウィリアム・シェイクスピア:朝夏まなと
- アン・ハサウェイ(妻):実咲凜音
- ジョージ・ケアリー(後援者・ハンズドン卿):真風涼帆
- リチャード・バーベッジ(劇団俳優):沙央くらま
あらすじ
作品概要・演出家
- 作・演出:生田大和による、シェイクスピア没後400年を記念したオリジナル・ミュージカル。
- エリザベス朝時代のロンドンを舞台に、劇作家シェイクスピア自身を主人公とし、その創作の源泉“言葉”に魅せられた人生を、実在の妻アン・ハサウェイや後援者ケアリー卿との出会いを通して描くドラマティックなストーリー。
冒頭のあらすじ
詩作に没頭する青年、ウィリアム・シェイクスピアは、言葉の力に魅せられながらも、その表現に迷いを感じていた。ある日、田舎町で出会った女性アン・ハサウェイとの交流が、彼の内に眠る創作への情熱を呼び覚ます。
やがて舞台は華やかなロンドンへ。名家ハンズドン卿との出会いが、彼の運命を大きく動かしていく——。
文学と劇、愛と野心が交差する中、彼の“言葉”は何を描き、何を失っていくのか…。
おすすめポイント
- 朝夏まなとの二面性を演じ分ける迫力ある芝居
純粋な青年期から成功期、そして言葉に苦悩する晩年まで、彼の“言葉”への愛と葛藤を1人で深く表現する朝夏さんの演技は圧巻です 。 - 青春ロマンスと劇中劇の豊かなミックス
アンとのロマンチックな出会いから、劇団支援、劇中挿入演出まで、シェイクスピア作品を模した劇中劇が巧みに織り込まれ、物語に深みと彩りが加わっています。 - 豪華コスチューム&ロンドン情景
エリザベス朝の貴族衣装や劇中劇の衣装、森やバルコニーのステージセットが視覚的にも楽しめる演出です。 - 全場大階段を活かしたダイナミックなショー『HOT EYES!!』付き
後半ショーは33年ぶりに全場で大階段を使用。娘役のエレガントさ、男役によるタンゴやクラブ風シーンなどバラエティ豊かな展開で、宙組のパワーを堪能できます。 - 初心者にも楽しみやすく、感動のバランスも◎
史実ベースのストーリーとフィクションのほどよい融合で、宝塚初心者でもドラマとショー両方を満喫できる構成です。
まとめ
『Shakespeare 〜空に満つるは、尽きせぬ言の葉〜』は、劇作家シェイクスピアの知られざる半生を美しく切なく紡ぐ感動作。朝夏まなとさんと実咲凜音さんのトップコンビが生み出す情感、真風涼帆さんら脇役の存在感が作品を豊かに彩ります。ショー『HOT EYES!!』の大階段演出も含め、宝塚のエンタメ力を丸ごと楽しめる、おすすめの一本です!
ディミトリ ~曙光に散る、紫の花~

2022年|星組|主要キャスト
- ディミトリ(ルーム・セルジュークの王子):礼 真琴
- ルスダン(ジョージア王女):舞空 瞳
- ジャラルッディーン(ホラズム王):瀬央 ゆりあ
- アヴァク・ザカリアン(忠臣):暁 千星
あらすじ
作品概要・演出家
- 脚本・演出:生田大和。並木陽の小説「斜陽の国のルスダン」をもとに、13世紀のジョージアを舞台にした浪漫楽劇。
- 人質として異国から送られた王子・ディミトリが、王女ルスダンと育ち、愛と忠誠の間で揺れる運命を描く。壮大な歴史と情熱が交錯する物語。
冒頭のあらすじ
幼くして異国へ人質となったディミトリ(礼 真琴)は、ジョージアの宮廷で孤独な日々を送っていた。冷たい視線の中、唯一心を許せるのは、同じ幼年期を共有した王女ルスダン(舞空 瞳)だけだった。
緑陰の庭、王宮の華やかな晩餐、異教徒としての疎外感——。そんな中、ディミトリは自らの存在意義を問い始める。
友情か、愛か、忠誠か——彼が胸に秘めた思いは、やがて王国の運命とどう重なるのか。王子の沈黙の先にある“紫の花”は、どんな未来を映し出すのか…。
おすすめポイント
- 礼 真琴×舞空 瞳の繊細で熱い演技
異なる出自の二人が育んだ絆と情愛を、繊細な演技と存在感で体現しています。視線や仕草に込められる切なさが胸に迫ります。礼さんも公演ごとに演技の深みが増しています。 - 壮大な歴史ロマンとエキゾチックな異国情緒
13世紀ジョージア、宮廷や戦場のデザインが美しく、異文化の空気感に引き込まれます。大規模セットが作品のスケールを後押ししています。 - 生田大和によるドラマティックな構成
歴史的背景と登場人物の心情が丁寧に重なり、愛と忠誠の葛藤がしっかりと描かれた構成が見どころです。生田先生の脚本が素晴らしいです。 - 深い余韻を残すクライマックス
クライマックスのディミトリとルスダン 。ディミトリのルスダンへの想い。そしてルスダンのその後の運命を想像すると涙なくして最後は見れません。 - 二本立て構成のバランス感
ミュージカル本編に続くショー『JAGUAR BEAT―ジャガービート―』との二本立てで、ロマンとエネルギーの両面が楽しめる豪華演目構成です。JAGUAR BEATも必見ですよ。
まとめ
『ディミトリ ~曙光に散る、紫の花~』は、異国で育まれた切ない愛、激動の時代を生き抜く王子の信念、そして王国の運命を揺るがす葛藤を描いた感動作です。礼 真琴さんと舞空 瞳さんの好演が光り、歴史ロマンやミュージカルを初めて観る方にもおすすめできる一作となっています。
今夜、ロマンス劇場で

2022年|月組|主要キャスト
- 牧野健司(映画監督志望・助監督):月城かなと
- 美雪(モノクロ映画から飛び出したヒロイン):海乃美月
- 俊藤龍之介(劇中俳優役):鳳月杏
あらすじ
作品概要・演出家
- 原作は2018年公開のヒット映画「今夜、ロマンス劇場で」。脚本・演出は小柳奈穂子さんが担当し、月組トップコンビ・月城かなとさん&海乃美月さんのお披露目作品として舞台化されました。
冒頭のあらすじ
映画監督を夢見る健司(助監督)は、よく通っていた映画館「ロマンス劇場」の映写室で、モノクロ映画のヒロイン・美雪と出会います。
モノクロから飛び出してきた彼女は、色彩あふれる現実世界に慣れず戸惑いながらも、健司は彼女を案内しながら、徐々に惹かれていきます。
二人の間に芽生える奇跡のような恋。切ない秘密を抱えた美雪の存在が、この物語をどう動かしていくのでしょうか…?
おすすめポイント
- 幻想と現実をつなぐ“映画の魔法”
セットや照明、衣装がモノトーンからカラフルへと動的に変化し、健司の心情とリンクする演出は圧巻です。 - トップコンビの芝居心と役作り
月城かなと(健司):ドジで頼りない青年ながら、誠実さと純真さがにじみ出る人物演技。地味なスーツでも目が離せないスターオーラが光っています。
海乃美月(美雪):大人しく押し出さずとも、言葉や仕草で感情の機微を鮮やかに表現。おてんば姫役として、絶妙なバランス感が際立ちます。 - 小柳奈穂子演出の“宝塚化”の妙技
原作の世界観を壊さずに、月組全体を活かしたストーリーテリングに刷新。暁千星さんらの“蛇・三獣士”キャラクターを加え、コミカルで楽しい宝塚らしい演出になっています。 - ラストシーンが感動的
クライマックスの舞踏会の場面では、映像と光の演出がとてもきれいで、まるで夢の中にいるような気分になります。舞台と客席のあいだがだんだんと溶けていくような、不思議で感動的な時間が流れていきます。
まとめ
『今夜、ロマンス劇場で』は、映画と恋、夢をテーマにしたファンタジックなラブストーリーです。月組トップコンビのフレッシュな初舞台に、ジャズショーの軽快なリズムが加わり、初心者でも十分に楽しめる舞台構成になっています。
映画が好きな方にも、宝塚初心者の方にもおすすめできる、一夜の夢のようなロマンティックな作品です。
ANOTHER WORLD

2018年|星組|主要キャスト
- 康次郎:紅 ゆずる
- お澄:綺咲 愛里
- 徳三郎:礼 真琴
- 赤鬼:瀬央 ゆりあ
- 貧乏神 :華形 ひかる
あらすじ
作品概要・演出家
『RAKUGO MUSICAL 「ANOTHER WORLD」』は、演出・谷正純による“落語ミュージカル”。
古典落語のネタ「地獄八景亡者戯」などをベースに、「死後の世界」を舞台にしたちょっと不思議でコミカルなお話です。現世とあの世の間で巻き起こる騒動の中に、恋や人情も織り込まれています。
冒頭のあらすじ
若旦那の康次郎は、ある日ふと目を覚ますと、なんと“あの世”にいて…。
不思議な世界をさまよう中で、お澄という娘と出会い、一緒に旅をすることになります。
次々と現れる個性豊かなあの世の住人たち、そして康次郎の行く先に待っているものとは?
テンポよく進む物語に、笑ったり驚いたりしながら、先の展開が気になってしかたがなくなるはずです!
おすすめポイント
- 紅ゆずると綺咲愛里の名コンビが魅せるテンポ感
康次郎役の紅ゆずるさんは、大阪弁を交えた明るい若旦那役がぴったり。綺咲愛里さん演じるお澄とのやりとりも軽快で、二人の掛け合いがとにかく楽しいです。 - 落語ネタ満載で笑いがいっぱい!
「地獄八景亡者戯」など、伝統的な落語の要素をうまく取り入れながら、宝塚らしいアレンジで見せてくれます。登場人物の会話や展開がとてもテンポよく進み、自然と笑顔になれます。 - 礼真琴の江戸っ子キャラがハマり役
徳三郎役の礼真琴さんは、粋で勢いのある若旦那役がとても魅力的。江戸弁も様になっていて、キレのあるお芝居と歌で物語をさらに盛り上げます。 - 瀬央ゆりあ・華形ひかるなど、脇も豪華で個性的
瀬央ゆりあさんが演じる赤鬼、華形ひかるさんの貧乏神など、地獄の住人たちが強烈でおもしろい!特に華形さんは貧乏神にしか見えません!(いい意味です)星組のメンバーの個性が生きていて、それぞれのシーンで笑わせてくれます。 - 衣装とセットもカラフルで見ごたえあり
“あの世”の世界観がとてもカラフルで華やか。地獄なのに楽しくて美しい、という宝塚ならではの演出が見事です。
レビュー『Killer Rouge』も見逃せない!
公演後半のショー『Killer Rouge』は、紅ゆずるさんの「紅(ルージュ)」をテーマにした華やかなステージ。
ラインダンスには104期生が初登場し、ショーならではのきらびやかさが満載。銀橋を使ったお客さんとの一体感ある演出も楽しいです。
まとめ
『ANOTHER WORLD』は、笑い・お芝居・音楽がぜんぶ楽しめる、ちょっと風変わりでとっても魅力的な舞台です。
落語を知らなくてもまったく問題なし!星組の明るくて勢いある魅力がいっぱい詰まっていて、初心者にもおすすめの一本です。