雪組は、「和物の雪組」と呼ばれるほど演技力に定評のある組。
ストーリー性の高い作品が多く、初心者にも感情移入しやすい舞台が魅力です。
また、古典作品や文学的な演目の解釈にも優れ、落ち着いたトーンの舞台を楽しめます。
この記事では、雪組で初心者におすすめの作品を、「一本もの」「二本立ての芝居」「二本立てのショー」に分けて紹介します。
一本もののおすすめ作品【雪組】
エリザベート ―愛と死の輪舞〈ロンド〉―

1996年|雪組|主要キャスト
- トート(死/Der Tod):一路真輝
- エリザベート(皇后・シシィ):花總まり
- フランツ・ヨーゼフ:高嶺ふぶき
- ルドルフ:香寿たつき
- ルキーニ(道化師/ナレーター):轟悠
あらすじ
作品概要・演出家
『エリザベート』はオーストリア皇后シシィ(エリザベート)と死=トートとの運命的な愛を中心に、19世紀末ウィーンを舞台に繰り広げられる歴史ロマン・ミュージカル。
1996年雪組公演は宝塚版初演であり、一路真輝率いる雪組にとって大きな挑戦かつ転機となった作品です。
演出家の小池修一郎は、この作品を通じて宝塚の演出像に新風を吹き込み、一気に注目を浴びる存在となりました 。
冒頭のあらすじ
舞台はウィーン、皇后エリザベート。美しく自由を愛する彼女は、宮廷という檻の中で次第に生きづらさを感じ始める。
その胸中で彼女を永遠に見つめ続けるのが、死の象徴=トート。
彼はシシィにささやく。「おまえを愛してしまった死だ」と。
その声を聞いた時、エリザベートの中で何かが揺れ動く。
輝く人生と、逃れられない宿命。
この出会いが、彼女を永遠と絶望の狭間へと誘っていきます――。
おすすめポイント
一路真輝が紡ぐ“死神=トート”の狂気と誘惑
一路真輝さんが演じるトートは、冷静で美しく、観客を魅了する存在。
死そのものが人間に恋するという不可思議な設定を、彼女は妖艶かつ静謐に表現しています。
シシィの成長とともに寄り添い、時に翻弄し、そして彼女を運命の深みへ誘うトートの姿は、演技・歌ともに圧巻です。
花總まりのシシィが見せる“孤高の皇后の孤独”
初主演トップスターとして臨んだ花總まりさんは、公演当時研5でありながら、その繊細な歌唱と存在感で物語を牽引しました。
鏡の間で出てきた瞬間の美しさ、宮廷の重圧に押しつぶされる様子─やはりエリザベートといえば花總まり。彼女を超えるシシィは出てこないでしょう。
轟悠のルキーニが舞台に与える“狂気と語り”
ナレーター役のルキーニを轟悠さんが演じたことで、作品に強烈な個性が生まれました。
“狂気を孕んだ観客席案内人”としてトート×シシィの関係に皮肉と狂言のスパイスを加え、舞台の奥行きを深めています。ルキーニも轟さんを超える人は出てこないでしょう。
豪華キャストと舞台演出の調和
フランツ皇帝を高嶺ふぶきさんが重厚に演じ、若き皇太子ルドルフには香寿たつきが登場。
トップ二人を含む主要キャスト5人の歌唱力がこれほどまでに高い公演は他にありません。
舞台美術はウィーン宮廷の豪華絢爛さと、死の世界の暗黒・幻想を緻密に表現。
雪組の若き演者たちによる群舞は圧巻で、音楽と視覚効果が一体となった舞台芸術として高い完成度を誇りました。
まとめ
1996年雪組版『エリザベート』は、
「死」に魅入られた皇后と、死そのものが恋した物語──という、宝塚に新たな境地を切り開いた大作です。
一路真輝×花總まり×轟悠の豪華キャストの共演によって、優雅さと狂気、哀しさと美しさが渾然一体となり、宝塚ならではの壮大な舞台世界を創出。
その後の宝塚史においても再演が繰り返される人気作の原点であり、ファンの間で「伝説」として語り継がれる珠玉の一作となっています。
二本立ての芝居でおすすめ【雪組】
星逢一夜(ほしあいひとよ)

2015年|雪組|主要キャスト
- 天野晴興(紀之介):早霧せいな
- 泉(三日月藩の娘):咲妃みゆ
- 源太(親友・泉の幼なじみ):望海風斗
- 徳川吉宗(第8代将軍):英真なおき
あらすじ
作品概要・演出家
- 作・演出:上田久美子によるオリジナル和モノ・ミュージカル・ノスタルジー作品。
江戸時代中期、天文学に夢を馳せる三日月藩の少年・紀之介(後の晴興)と、身分違いの娘・泉、幼なじみの源太との間に芽生えた友情と愛、そして運命の行方を描く。 - 上田久美子の宝塚大劇場デビュー作で、「悲恋」・「絶望と希望」「濃厚な情」をテーマにしたドラマティックな日本モノとして構成。
冒頭のあらすじ
時は江戸時代、長崎のはずれにある小さな藩。厳格な父に育てられた藩主の息子・天野晴興(あまのはるおき)は、幼いながらも複雑な思いを胸に抱えていた。
そんなある夏の日、彼は身分を隠して城下を抜け出し、自由な時間を楽しむうちに、町の娘・泉とその兄弟たちと出会う。
年齢も境遇も異なるはずの彼らとの交流は、晴興の心にこれまで知らなかった温かさを灯していく。しかし——。
星が瞬く一夜の出会いは、やがて避けがたい宿命の幕開けとなる。少年たちの無垢な時間は、どこへ向かっていくのか……。
おすすめポイント
- 早霧せいな・咲妃みゆ・望海風斗の見ごたえあるお芝居
この作品では、主要キャスト3人の熱い演技が特に印象的です。早霧さんが演じる孤独で頭のいい晴興(はるおき)、咲妃さんの心に強い思いを秘めた泉、望海さんのやさしくて情の深い源太。それぞれの役が心に響き合い、舞台に深みを与えています。 - 星とふるさとの風景が重なる、美しい世界
星や天文学のテーマが物語の中心にあり、星をめぐるロマンチックな話と、日本のふるさとの風景が重なって、とても美しい世界が広がります。感情が大きく動きながらも、落ち着いた雰囲気のあるストーリーが魅力です。 - 上田久美子さんらしさが詰まっている
まっすぐすぎるほど純粋な登場人物と、時代の流れにゆれる心の動きがていねいに描かれていて、上田さんらしい作風がしっかりと出ている大劇場作品です。 - あと味の良い作品
公演のあとには、客席からすすり泣きが聞こえるぐらい感動的で切ない作品ですが、なぜかあと味の良い作品です。最後キャストが子供の頃に帰って終わりますが、その笑顔がとても楽しそうです。
まとめ
「星逢一夜」は、運命に引き裂かれる三角関係と、星への夢とともに描かれる切ないドラマが胸に迫る作品です。雪組の実力派スター・早霧せいなさんを中心に、咲妃みゆさん、望海風斗さんという演技派が紡ぐ濃密な共演が光ります。悲恋だけで終わらない、余韻のある大劇場作品として、宝塚初心者にもおすすめの一作です。
二本立てのショーでおすすめ【雪組】
La Esmeralda(ラ エスメラルダ)

年度、組名、主要出演者
- 年度:2015年
- 組名:雪組
- 主要出演者:早霧せいな、咲妃みゆ、望海風斗
作品概要
『La Esmeralda』は、ラテン音楽や南国の情熱をテーマにしたエネルギッシュなレビューショーです。舞台は、エメラルド色の海に囲まれた島、火祭りが行われる夜、きらびやかなネオンの街など、さまざまな世界へと移り変わっていきます。
はじまりは、夜の幻想的なシーン。咲妃さんと望海さんが蝶のように舞うデュエットが印象的で、静かな緊張感に引き込まれます。そのあと、舞台は一転して明るく陽気な雰囲気に。ラテンのリズムに乗って、パワフルな場面が次々と展開されていきます。
演出は齋藤吉正さん。色彩豊かでスピード感のある場面構成が特徴で、この作品でもその持ち味が存分に活かされています。衣装、音楽、照明のすべてが情熱的で、まさに「観て感じる」タイプのショーです。
具体的な超ポイント:魅せ場集!
全体の印象:熱量がすごい!観てるこちらまで高揚するショー
静かな美しさと、情熱的なダンスシーンの対比が絶妙で、観ているだけで気持ちがどんどん盛り上がっていきます。シーンのテンポが速くて飽きないので、時間があっという間に感じられる作品です。
冒頭の“夜の蝶”シーンが幻想的
咲妃さんと望海さんが静かに踊るオープニングは、照明も音楽も美しくてとても幻想的。しっとりした雰囲気から、明るくて賑やかなシーンへ切り替わる流れがとても印象的です。
「火祭り」の迫力に圧倒される
真っ赤な照明と情熱的なリズムにのせて、ダンサーたちが一斉に踊る「火祭り」の場面は、とにかく迫力満点!舞台全体が熱を帯びて、客席までその熱気が伝わってくるようです。
早霧せいなさんの“海賊シーン”がとにかくかっこいい
中盤に登場する早霧さんの海賊姿が、本当に絵になります。歩き方や視線、衣装のなびかせ方までキマっていて、スターの魅力をこれでもかと感じられる場面です。
まとめ
『La Esmeralda』は、情熱的な音楽とキレのあるダンスがぎゅっと詰まった、見応えたっぷりのショーです。ストーリーを深く追うタイプではない分、感覚的に楽しめるのも魅力。宝塚レビューの醍醐味をしっかり味わえる一作だと思います。
エネルギーをもらいたいとき、元気がほしいときにぴったりの舞台。ぜひ一度チェックしてみてください!
【まとめ】
雪組は、「物語に引き込まれる力」が抜群。
心を揺さぶる芝居や、詩的なレビューは、宝塚が初めての方でも自然と魅了されます。
ストーリー重視で選びたい方には、雪組がぴったりです。
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