星組柳生忍法帖/モアダンディズム 2回目観劇感想
星組柳生忍法帖/モアダンディズム 2回目観劇しました。初日以来です。
10/23 11:oo公演
初日の観劇では柳生忍法帖はかなり辛口の感想を書きましたが、2回目は逆にかなり好印象です。佳作と言っていいのではないでしょうか。
今回一番注目していたことは「ゆらの十兵衛に対する恋心」です。
ゆらの十兵衛への突然の恋心は原作通りです。
しかし
「原作通りだなあ」
「でも宝塚でしかもゆらをヒロインにした以上もう少しなんとかならなかったのか」
が初日の正直な感想でした。
なので2回目はとにかくゆらの芝居に注目しました。
全くオペラのいらない席にもかかわらず、ゆらの出ている場面はゆらをオペラで追いました。
そしてはっきりわかりました。
ゆらの十兵衛への恋心の変化は決して突然ではない
まずは第9場B 鶴ヶ城門前
十兵衛が一人鶴ヶ城へ乗り込む場面です。石垣の階段上にゆらがいます。
そこで十兵衛が沢庵和尚に熱弁をふるいます。
「、、、嫌でござる、和尚。拙者がともかく、左様な理由で、女たちを死なせる事は、嫌でござる」
「女たちを見殺しにして、なんの武士道、なんの仏法か。」
始めは今まで通り澄ました冷たいゆらの表情が十兵衛の言葉を聞いているうちにみるみる変わっていきます。
十兵衛の言葉に引き込まれ、落ち着かなくなり心の動揺が隠せません。下に下がっていた手がだんだん胸の前まで上がっていきます。
そして「お待ち!」「殺すのは惜しい」と繋がっていくのですね。
さらに第10場 鶴ヶ城雪地獄
ゆらが「この男が絶望し、悲鳴を上げる姿をわらわは見てみたい」とお香を使って十兵衛を苦しめる場面です。
十兵衛が苦しんでいる姿を壇上で見つめるゆら。
冷淡な表情で楽しんでいると思いきや。
ゆらの表情は全く逆で、十兵衛が心配でたまらないといった感じです。おろおろしてここでも動揺しているのがありありとわかります。
そして「ゆらは十兵衛に恋をしました」の台詞に繋がります。
一見、十兵衛を懲らしめるためにお香攻めをゆらが企んだように思いますが、実際はゆらの気持ちには大きな変化がありました。
それがわかるのが
第11場B 鶴ヶ城地下でゆらが言う台詞です。
「十兵衛様が、城侍のひしめく鶴ヶ城へ、ただ一人乗り込んで来られたとき、わらわは身震いいたしました。
その身震いが何であるか、わらわは知らなかった。いいえ、知っていたけれど、知るまいとした。打ち消すために憎もうとすら思いました。」
この物語は柳生十兵衛のかっこよさが一番のアピールポイントだと思いますが、十兵衛の女性への優しさも主題の一つではないかと思います。
堀一族の女7人衆への想いはもちろん、加藤家に囚われた女たちへの優しさもあります。
そういう十兵衛の女性への優しさにゆらは惹かれたのだと思います。
ゆらも男社会の犠牲者です。
芦名一族のために加藤明成の妾にされ、生きるために殿である明成、父である銅伯のいいなりになってきた可愛そうな女性です。
そんなゆらが十兵衛の優しさに触れて一気に恋に落ちた、十分に理解できます。
そしてその心の変化をなこちゃん演じるゆらは的確に演じています。
これが理解できるとこの物語は俄然共感できますし、よくできた作品だなあと感じます。
ただし
ゆらの心情の変化に気づくためにはゆらにロックオンしてないとわかりません。それも舞台の端にいるゆらです。
僕は原作も読み、ル・サンクで台詞もほぼ頭に入った状態でゆらを見てました。
1回の観劇で何の予備知識もなく舞台を見てゆらの心情の変化を理解することは不可能に近いと思います。
なので欲を言えば例えばゆらの心情を表現する歌を入れるとか、ワンカット十兵衛との絡みを入れるとかほしいところです。
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