星組東京公演柳生忍法帖を楽しむために
いよいよ11月20日から星組柳生忍法帖/モアダンディズムが始まりますね。楽しみです。
東京公演から初めて見るという人も多いと思いますのでその楽しみ方を書いてみたいと思います。
ネタバレ満載ですので初見で楽しみたい方はスルーされたほうがいいです。
さて今回の星組公演、ショーのモアダンディズムは文句なく楽しいです。なので何も考えずに見ていただければ楽しめると思います。
芝居の柳生忍法帖は少々癖があります。
なのでめちゃくちゃ面白いという人と全く楽しめないという人の落差が大きい公演と言えます。
タイプ別に楽しみ方を書いていきます(あくまでも僕個人的発想です)
●ストーリーとかあまり拘らない人
●とにかくかっこよくて楽しい舞台が好きな人
●礼真琴(ことちゃん)が大好きな人
このような人は何も考えずにただ見るだけでも十分に楽しめると思います。
今回の演目は登場人物が多くてめちゃくちゃスピーディーに話が進んで行きます。
そして愛ちゃん演じる役がわかりにくい。
人物の心情をほとんど描いていない(もしくは描いていてもこちらに伝わりにくい)。
なのでそのような細かいことは気にしない人は楽しめます。
まずは十兵衛のことちゃん。
半端なくかっこいいです。歌唱力は言わずもがな。
歌の歌詞もメロディも素敵な曲が多いです。
普段なかなか見れない娘役の殺陣もかっこいいし微笑ましいです。
会津七本槍もみんなかっこいいので見応えあります。かっこよすぎるのが実は問題ではあるのですが。
一方、
●人物の心情やテーマなどを重視する人
●少なくとも今舞台で何をやっているのか理解できないと嫌な人
(ほとんどの人はそうだと思いますが)
このような人は最低限下記のポイントを知っておいた方が楽しめると思います。
堀女たちとの稽古の後、新郎新婦がたくさん出てくる場面
この場面は敵の殿様(加藤明成)を十兵衛たちが懲らしめるという場面です。
明成は七本槍を使って街中の美男美女の新郎新婦をさらいます。
目的は新婦は自分の性欲処理のため。
新郎は女を使ってヘロヘロにさせた上、千姫の家の前に放置する。
自分たちを狙っている堀女の黒幕である千姫が男を家に連れ込むような女だと悪評を立てるためです。
それをやめさせるために十兵衛が囮となって加藤家へ侵入するために十兵衛とお圭が偽の新郎新婦に化けて踊っているという設定です。
なのであの場面では眼帯をしていません。
そこへゆらが登場しますが父である銅伯の命令で会津から江戸へ送られて新郎を誘惑するします。
もちろんそれが十兵衛とは知りませんが。
ゆらやお圭、その他の女達さらには明成も突然倒れますが、あれは十兵衛の技で体のちょっとした動きだけで気絶させています。
虹七郎(せおっち)がその説明台詞を言いますが聞き取れてる人はほとんどいないと思います。
最後明成が千姫の家の前に放置され、大きな恥をかかせ新郎新婦の誘拐をやめさせることに成功します。
祭りの場面
今回の話は前半は江戸で、途中十兵衛たちも明成や七本槍たちも江戸から会津へ移動し最後は会津鶴ヶ城で終わります。
祭りはその途中の街での出来事です。
殿様明成が泊まった宿の娘おとねが籠に入れられますね。
おとねはそのまま会津へ連れて行かれますが最後地下牢で活躍する場面へと繋がります。
愛ちゃんが演じるのは3役?
愛ちゃんが演じるのは金髪の芦名銅伯と黒髪の銅伯、そして双子の天海(お坊さん)です。
途中出てくる黒髪の銅伯は100年ぐらい前の銅伯です。
芦名一族は今でこそ加藤家の家来ですが昔は会津を支配していました。
しかし滅ぼされ、いつかまた会津を支配しようと企む芦名一族の長である銅伯は、娘ゆらを殿様明成に嫁がせ明成に取って代わろうと企んでいるわけですね。
その昔の回想シーンに登場するのが黒髪の銅伯というわけです。
そして双子の天海はお互いどちらかが死なないと自分は死なない運命というの設定です。
天海の愛ちゃんは一場面しか登場しません。
その場面では堀娘のリーダー千絵に冷たく語りますが結局は銅伯の悪行に心を痛め自ら自害することでその悪行を終わらせる道を選びました。
それが最後スクリーンに天海が写り銅伯が十兵衛に殺される場面ですね。
ゆらの十兵衛への恋心
ここが一番わかりにくいです。
最後突然「ゆらは十兵衛に恋をしました」とゆらが告白してみんな「???」となります。
しかし途中のゆらの芝居をよく見ているとゆらがだんだん十兵衛に惹かれていくのが理解できます。
以下は以前の記事に書いたものから抜粋ですが
まずは第9場B 鶴ヶ城門前
十兵衛が一人鶴ヶ城へ乗り込む場面です。
石垣の階段上にゆらがいます。
そこで十兵衛が沢庵和尚に熱弁をふるいます。
「、、、嫌でござる、和尚。拙者がともかく、左様な理由で、女たちを死なせる事は、嫌でござる」
「女たちを見殺しにして、なんの武士道、なんの仏法か。」
始めは今まで通り澄ました冷たいゆらの表情が十兵衛の言葉を聞いているうちにみるみる変わっていきます。
十兵衛の言葉に引き込まれ、落ち着かなくなり心の動揺が隠せません。
下に下がっていた手がだんだん胸の前まで上がっていきます。
そして「お待ち!」「殺すのは惜しい」と繋がっていくのですね。
さらに第10場 鶴ヶ城雪地獄
ゆらが「この男が絶望し、悲鳴を上げる姿をわらわは見てみたい」とお香を使って十兵衛を苦しめる場面です。
十兵衛が苦しんでいる姿を壇上で見つめるゆら。
冷淡な表情で楽しんでいると思いきや。ゆらの表情は全く逆で、十兵衛が心配でたまらないといった感じです。
おろおろしてここでも動揺しているのがありありとわかります。
そして「ゆらは十兵衛に恋をしました」の台詞に繋がります。
一見十兵衛を懲らしめるためにお香攻めをゆらが企んだように思いますが、実際はゆらの気持ちには大きな変化がありました。
それがわかるのが
第11場B 鶴ヶ城地下でゆらが言う台詞です。
「十兵衛様が、城侍のひしめく鶴ヶ城へ、ただ一人乗り込んで来られたとき、わらわは身震いいたしました。
その身震いが何であるか、わらわは知らなかった。いいえ、知っていたけれど、知るまいとした。打ち消すために憎もうとすら思いました。」
この物語は柳生十兵衛のかっこよさが一番のアピールポイントだと思いますが、十兵衛の女性への優しさも主題の一つではないかと思います。
堀一族の女7人衆への想いはもちろん、加藤家に囚われた女たちへの優しさもあります。
そういう十兵衛の女性への優しさにゆらは惹かれたのだと思います。
ゆらも男社会の犠牲者です。
芦名一族のために加藤明成の妾にされ、生きるために殿である明成、父である銅伯のいいなりになってきた可愛そうな女性です。
そんなゆらが十兵衛の優しさに触れて一気に恋に落ちた、十分に理解できます。
そしてその心の変化をなこちゃん演じるゆらは的確に演じています。
このゆらの心情の変化が理解できると俄然ゆらや十兵衛に感情移入できます。ぜひゆらの表情をお見逃しなく!
1ヶ月半というとんでもなく長い大劇場公演期間を経てますますパワーアップした柳生忍法帖。
東京公演ではどんな芝居になっているのか楽しみです。
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